しするの覚書シリーズです。
認知症の代表的な症状として、『同じ発言・行動を繰り返す』というものがあります。
介護をする方(=介護者)にとっては、とてもストレスになる症状です。
当事者の方は、自分の話していたこと・とっていた行動を忘れているため、何度も同じことを繰り返します。
介護者は、同じことを何度も繰り返されるため、「いい加減にしてほしい」「なぜ何度言ってもわからないのか」等、苛立ちを感じるようになります。
なお、この状況で苛立ちを感じるのは、人間としては普通のストレス反応です。
決してダメなことではないと思っています。
そのストレス(苛立ち)に対して、どのように対処していくかを考えていきます。
繰り返される言葉と行動
これは現在『BPSD*1/行動・心理症状』と表現されるものの一種です。あまり日本語表記は使われていない気がします…
認知症の進行に伴い、様々に変化していきますが、人によって出る症状と出ない症状があり、程度も全く異なるため、『これが正解!』という対処法はありません。
しかし、いくつかの方法を試していくうちに、『その時のその方』に合う方法が見つかることもあります。症状の進行によって通用しなくなることもままありますけども…
先だって、こちらの記事に出会いました。
在宅での認知症介護「何度も同じことを言われて、もう辛い」と感じた時、試してほしい2つの方法(ダイヤモンド・オンライン) - Yahoo!ニュース
↑タイトルを全部見ていただいた方がわかりやすいので、タイトル表示にしています。(埋め込んだらタイトルが見切れました…)そしてこの方の経験というか経歴がすごくて尊敬しました。
まずこちらの記事をよく読んでいただくことをおすすめします。
(この投稿は上記の記事の紹介だと言っても過言ではない)
介護者にできる対処法
ここからは個人的な経験と学びとして、私なりに『認知症無限ループ』の対処をしていた話です。
いつでも何度でも新しい
以前の職場の利用者の方で、活動の時間に同じ質問をかなり頻繁に繰り返される方がいらっしゃいました。
作業手順の確認なのですが、同じところを5~10分くらいのサイクルで、何度も繰り返し尋ねられます。
お伝えしたときは「あ~、わかった、ありがとう!」とおっしゃるのですが、すぐに「ここどうだったっけ?」と声が上がります。
イラッときますね、だんだん。「さっき教えたのに!」ってなります。なりました。
しかし、尋ねた方にとっては『やりかたがわからない』事実があるだけです。
さっき『尋ねた』過去は、消えてなくなっています。
その場面で、介護者の『さっき教えた』気持ちをそのまま出してしまうと、認知症当事者の方は『わからない』から聞いただけなので、もっと混乱します。
介護者の方も、当事者の方の混乱を招いたことにより、結果的に手間や時間や心の負担が増えます。
そこで、私が意識したのは自分も忘れることです。
極端な意見かもしれませんが、自分自身が『尋ねられた事実』を一旦意識的に捨てることで、「さっき教えたのに!」という苛立ちはなんとなく感じられなくなります。
話をこっそりすり替える
『こっそり』というと聞こえが悪いかもしれませんが、『知らない間に違う話題にする』という感じです。
通所施設まで来ると、「それじゃ私は帰るから」とおっしゃる方がおられました。
すぐに帰れないとわかると、声を荒げたり、手を上げようとされる方です。
しかし、その方にお仕事や趣味の話を振ると、表情や態度が変わり、そのまま会話をしながら過ごされる様子がありました。
話題が切り替わることで、その時に気になって繰り返していた発言や行動を離れることができます。
気持ちが切り替わったタイミングで、その方の好きな作業等につなげることができれば、その後も穏やかに過ごすことができるかもしれません。
これには、会話を続けるための時間が必要です。加えて、普段から『切り替えスイッチ』になる話題(ネタ)を見つけておくとよりスムーズになります。
少しでも穏やかな日常のために
以前の記事で、『自分と相手の現実は一致しない』という趣旨のことを少し書いているのですが、介護者が自分の認識している『現実』だけで認知症の方と向き合うのはかなり大変です。
世界が同じように見えているわけではないので、どうしてもズレが生じます。
そのズレがストレスを生み出します。
自分に余裕がなくなると、思いや行動をコントロールするのはとても難しくなります。
そして、介護者の心に余裕がない状態を、認知症当事者は敏感に感じ取ります。
介護者の方は、ひとりで背負わないでください。
周囲の方は、介護者の精一杯を認めてください。
可能であれば、福祉制度を活用してください。
私の拙い知識と経験が、どなたかのお役に立てば幸いです。
*1:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementiaの略称。『周辺症状』とも呼ばれているもので、個人差が大きい。記憶障害等の『中核症状』の進行に伴って変化していく。