しするは今日も考える。 -Thistle Thinks GOOD Thoughts-

日常のおもしろいこと、経験から学んだことを考察中。

【介護】『できない』をフォローすることについて。(トイレの失敗編)

自粛という名の引きこもりを継続中のしするです。

自分が学んだことを忘れないように、覚書としてこのシリーズを書いています。

 

↓先日の記事↓で「別記事にします」と宣言した手前、ちゃんとしたものにしなくては!と思いましたので、ちょっとがんばって書きます。(比較的長いです。読んでいただくのに10~15分程度は必要かもしれません)

thinkingthistle.hatenadiary.com

 

今回はタイトルにもありますように、トイレにまつわる『できない』にフォーカスしていこうと思います。

 

 

そもそも『トイレに行く』って?

ちゃんと『排泄する』には

実は、正常に排泄するためにはいくつかの条件があります。

 

①排泄に必要な動作ができる

②体がちゃんと尿や便をつくれる

③尿や便を適切に溜めて、しっかり出すための体の機能が働いている

 

これらのどれかに問題が起きると、排泄に支障をきたすわけです。

f:id:Thistle37:20200525220141p:plain身体機能の問題による失敗は、決して少なくはないです。

 
『トイレに行く』ことは結構複雑

普段、健康で体を自由にコントロールできる時には、あまり意識していないかもしれませんが、排泄にはいろいろな条件が関わっています。

 

体の動作一つとっても、不自由になれば途端に『トイレに行く』ことが難しくなります。

個人的に、骨折やケガで両手が使えない経験が2回ほどあるのですが、トイレは物凄く困りました。

できないことが多すぎる。

服とか下着を下せないし上げられないし、拭くことも難しい。

しかも当時はウォシュレットもなかったため、なんてこったと思いました。

助けてくれた家族ありがとう。

 

体調が悪い、もしくは病気や事故で排泄に関係する部分に障害が起きれば、それもまた『トイレに行く』ことを難しくさせ、生活に支障をきたします。

 

私の夫は生まれつき内臓があまり強くないらしく、頻繁にお腹を壊します。

(食生活の調整で少し改善してきましたが、これはまた別の機会に)

何かしている途中で度々トイレに行かなくてはならない状況を見ていて、これもまた生活の『困りごと』だと感じています。

身体機能の状況によっては、もっとコントロールが難しい方もいらっしゃると思います。

 

自分で『トイレに行ける』とは

『トイレに行ける』とさらりと書いてしまうと、何気ない日常の一部のように感じます。

しかし、その一連の流れを細分化してみると、かなりたくさんのことを実行していることがわかります。

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『トイレに行く』ことを細分化*1

①尿意や便意を感じる

②トイレまで行き、便器を認識する

③衣類を脱ぐ

④便器を正しく使う

⑤上記の間、出すことを我慢する

⑥ちゃんと出す

⑦きちんと拭いて、きちんと処理する

⑧衣類を着ける

⑨流す

⑩手を洗い、トイレから移動する

 

ざっとわけると上記のようになります。

なかなかに忙しいです。

しかも、これを順番通りにする必要があります。

 

先日の記事でも書いていますが、何かが『できない』時には、すべてが難しいのではなく、一連の動作の中のどこか一部で難しくなっていることが多いです。

あるいは、順番通りに実行することが難しくなっているのかもしれません。

 

ここからは、個人的な経験も交えつつ、解説と対処法をまとめていきます。

 

①尿意や便意を感じる

トイレに行くためには、まず『行く必要がある』と認識することが必要です。

病気や事故でその感覚がなくなった場合は、時間を決めて定期的にトイレに行く、自分がトイレに行った方がいい条件を把握する、などの対策が必要になります。

認知症などにより、自分で管理するのが難しい方の場合は、周囲の人がその人のリズムを把握する、もしくはリズムを作ることで改善する場合があります。

 

②トイレまで行き、便器を認識する

これが意外と重要で、初期~中期の認知症の方はこの部分が問題になることが多いです。

場所の失認*2がある方であれば、まずトイレまで行くことが難しくなります。

また、トイレまで行けても、便器がどこでどれなのか、どのように使うのかがわからなくなる場合もあります。

 

トイレがどこなのかを見やすく示したり(その場合、その方が普段使っておられる表現(便所、お手洗い等)で書いておく方がわかりやすいです)、必要に応じてトイレに一緒に入り、正しく使えるように誘導することができます。

 

また、トイレのドアを正しく開け閉めできるかも重要です。

握力や筋力の低下で、ドアノブが上手く扱えないケース等もあります。認知症の方であれば、住宅のリフォーム等でそれまでと違った開け方(開き戸⇒引き戸に変えた等)になった場合は、混乱してわからなくなるといったこともあります。

状況によっては、扉に開け方を示す、ドアノブ用の補助具を使う等の対応で、問題が改善することがあります。

 

③衣類を脱ぐ

手や足に痛みがあれば、それだけでも時間がかかってしまいますし、麻痺や拘縮*3があれば、より難しくなります。

認知症の方は、脱ぐ必要を忘れてしまう場合や、脱ぐ方法や手順を忘れたり、間違ってしまうこともあります。

 

周囲の人が手伝うことと併せて、その方自身が脱ぎ着しやすい服を選ぶことも一つの方法です。

 

④便器を正しく使う

洋式便器であれば、ふたを開けて正しく座っていただくことが必要です。

認知症の方では、ふたが閉まったまま座って用を足されるケースもありますので、その場合はふたを外してしまうことも一つの正解かもしれません。(感染予防の観点からは、ふたを都度閉めることは重要です。介助者が都度開け閉めすることもできますが、ケースごとに適切な対処方法は違ってくると考えています。)

 

男性用であれば、まず正しい位置に立っていただく必要があります。

以前の職場で、試験的に『正しい立ち位置』に足の形を貼ってみたところ、失敗率が減少したことがありました。ゼロにはならなかったので、すべての方に有効とはいえませんが、試してみる価値はあるかと思います。

 

⑤上記の間、出すことを我慢する

トイレの『失敗』について考えるとき、見落としがちなのがこちらです。

がんばっていても途中で我慢できなくなれば、それは『失敗』になってしまうのです。

 

これは体の機能的な部分も大きく関係していて、関係する筋肉の筋力低下や、神経の機能障害、内臓疾患など、我慢することが難しくなる原因は本当にたくさんあります

 

原因が正しくわかっていると、対処の方法も見えてきます。

筋力低下があれば、その部分を鍛えるトレーニングを取り入れることができるかもしれませんし、病気の治療によって改善する場合もあります。

本人様がコントロールするのが難しい場合は、排泄リズムを把握することで、先手を打つこともできます。

 

⑥ちゃんと出す

当たり前では?と思われるかもしれませんが、これも大切です。

出せずに苦戦される高齢の方は結構多いです。特に、身体機能が低下して、体が思うように動かせなくなっている方は、薬に頼らないと出て行ってくれないというケースもよく見られます。

あまりに出ていかない場合は、身体全体の健康状態に影響しますので、服薬によるコントロールも含めて『ちゃんと出す』ことをサポートする必要があります。

(裏を返せば、服薬によってコントロールできる方は、介助する側にとってもある程度対応がしやすくなる場合があります。リズムを把握すると、いつ頃出てくるとか予測できるようになりますので。

 

⑦きちんと拭いて、きちんと処理する

認知症の方では、この部分が難しくなる方が多くみられます。

拭くことを忘れてしまったり、拭いてもきれいになっていなかったりするため、下着や衣類が汚れてしまいます。場合によってはそれを隠してしまう(この場合は、本人様が失敗に気づいているが、それを恥ずかしくて隠したいという心理が働いている)ので、家庭の中で問題になることが多いです。

 

身体的な問題によって、拭くのが難しくなっている方については、ウォシュレット等の活用が有効であることが多いです。

高齢の方でも、普通に使いこなしておられる方は少なくありません。

ただし、使用に抵抗を感じられる方もいらっしゃると思うので、周囲の工夫が必要です。

できるだけ穏やかな声や表情で「お湯が出ること」「きれいにしていること」を伝えることが大切です。

 

また、拭いた後の紙を違うところへ捨てられるケースや、尿漏れパッド等をトイレの中に捨ててしまわれるケースもあります。(後者は結構大変です…)

パッドに関しては、特に他人に見られるのは恥ずかしいと感じることですから、声掛けにも配慮が必要です。

これはかなり介助者の個性が出る部分なのですが、比較的明るい感じで、なおかつ本人様を心配しているのが伝わる声掛けをする人の方が、スムーズに介助できている印象があります。

 

⑧衣類を着ける

脱ぐ時と同様、身体的な機能が大きく影響します。

認知症の方は、時々身に着ける順番等を間違えられたりもされるので、トイレを離れる前に注意が必要です。

 

⑨流す

水洗のトイレを流すことを忘れてしまうケースも多いです。

ただ、その場所のトイレの流し方がわからなくなっている場合(特にトイレをリフォームされた時)もありますので、本人様の様子を観察することで、改善の糸口が見つかることもあります。

 

⑩手を洗い、トイレから移動する

手を洗うことを忘れられる方は多いです。特に、習慣としておられない方に手洗いを促すのは大変です。

通所介護の施設等の『出先』であれば、余所行きモードになっておられるので、比較的してくださる方は多いのですが、家となると話は別です。

 

洗面所で洗うことが難しい場合は、一旦離れてからウエットティッシュ等で対応することもできるかと思います。

 

何が『できない』かを知り、どうやってサポートするか

私が働いていた先で、場所の失認や幻視*4があり、トイレに行きたいのにどこかわからない、という方がおられました。

 

「ここだったと思うんだけど…」とおっしゃるので(本人様も自信がないケース)、正しくトイレまで来られている場合は「そうです、こちらですのでご案内しますよ」と誘導し、違っていた場合は「あ、こっちの方だったかもしれないです。一緒に行ってみましょうか」と一緒に行く流れを作っていました。

 

その方の場合は、ドアの取っ手や便器、トイレットペーパー等の位置を把握するのが難しいケースでした。

そのため、介助者ができるだけ一緒に個室に入って「こちらに座ってくださいね」と座れる位置まで誘導します。

トイレットペーパーは本人様が手を伸ばされ、上手く掴めていない時だけ、「こちらに!」とちょっとコミカルに言いながら、手元にペーパーの端を渡したり。

ほかの動作は特に問題なく行われていたため、その間は気配をなるべく消していました。

そして、笑顔で一緒にトイレから出てくることができます。

 

介助を必要とする方でも、自分でできる動作は自分で行っていただく流れを作ると、お互いのストレスが減ることが多いです。(多少時間がかかることは否めませんが)

 

何より、その方が『できる』ことを(言い方はキツイですが)奪うことで、『できる』ことをする機会がなくなり、いつしか『できない』ことになってしまう場合だってあるのです。

 

だれかの『できない』を助けるためには、まず観察することが必要です。

この時、『できない』という結果にとらわれると、原因を見落としてしまうことが多いように思います。

その人が何に困っているか、どこでつまづいているかがわかると、助け方も見つけやすくなります。どの部分に困っているかがわかることは、改善の入口です。

部分的な『できない』を補うことで、全体としては『できる』ようになるかもしれませんよ。

 

 

 長くなりましたが、最後まで目を通してくださってありがとうございます。

私の経験が、だれかの『困りごと』の改善につながりましたら幸いです。

 

 

*1:個人の知識で正しくお伝えできるか不安だったので、新・介護福祉士養成講座/生活支援技術Ⅱ(中央法規)を参照しています。表現をわかりやすくするため、そのままの転載はしていません。

*2:失認:目や視神経に問題はないが、脳がその情報を正しく認識できない状態。

*3:拘縮:関節が固くなり、動かしにくくなる状態。

*4:幻視:実際にはないものが見えている状態。本人にとっては現実なので、周囲は対応に配慮する必要がある。